生まれ故郷の香川は、日本で一番小さな瀬戸内海に面した県。海の幸
は私の大好物です。

★ シャコ ★

 シャコは、買う時に生きていないといけない。死ぬと、身が溶けて、
味が落ちてしまうから。ちょっと残酷だけど、ガサガサ動いているヤ
ツを湯の中にゴソッと入れる。しばらくして、赤くなったら、もう出
来上がり。シャコを食うには、調理バサミが不可欠。思い切って頭を
落とし、左右から1/4づつくらいカラを切り取る。背中をめくって、
身が入っていればラッキー。メスが卵を持っていれば、もっとラッキー。
なお、カラをめくって中味が溶けていたら、食わない方がいい。

★ カニ ★

 ワタリガニが美味しいと思う。これは好みの問題。あと、名前は知
らないけど、瀬戸内を泳いでいる緑色のカニも好き。肉がち密で、海
の風味タップリ。ミソはドロくさいので食べない。淡水に住んでいる
カニは食わない方が身のため。遊ぶだけにしましょう。

★ ウナギ ★

 川に住んでいるけど、海で生まれるから Sea Food の仲間にしても
いいかな? 年から年中カバ焼きが食べられるので、有難みが少し薄れ
たけど、それでもウナギ丼はうまい。川で出会ったら超ラッキー。網
ですくって (すぐ隠れるので手強い) 手でつかんで (これも難) 捕ま
えたら、「食ってやるぞ! 」と思わずにはいられないだろう。ヒョロ
いのしか捕まらないけど。 (うな丼と紅茶は相性がいい。)

★ アサリ ★

 きれいな砂浜にはあんまり居なくて、少しドロっぽい所にゴロゴロ
居る。そういう所には、得てしてゴカイとか、見た事も無い様な奇妙
な生き物がいっぱい居るので、きっと養分が豊富なんだろう。砂を吐
かせれば、何にでも調理出来るのは当り前なんだけど、私はワイン蒸
しが好き。ガーリックオイル又はオリーブオイルを鍋にいれて、アサ
リを入れる。入れすぎると、殻が開いた時に鍋が一杯になるので、分
量に注意。 (深手の鍋がいい。) 後は白ワインとパセリのみじん切り
を入れて、加熱するだけ。

★ ハマグリ ★

 アサリ同様、ポピュラー。父親の話によると、海辺で見つけて、即
割って食べると美味しいとか。今はそんな場所あるのかな〜?

★ 殻付きのカキ ★

 カキ料理で、一番美味しいのはカラ付きのまま焼いたもの。網の上
で焼こうが、オープンで焼こうが、鉄板の上で焼こうが関係ない。要
するに殻の中でカキがダシ汁を出して少し小さくなっていれば良いの
である。カパッと殻を開けよう。20 個も 30 個も食べる時には、中
のダシ汁を惜しげもなく流して味わう。 (さもないと、ノドが乾く乾
く。) 一つ二つ食べる時には、ダシ汁も味わおう。 (殆ど海水なのだ
けど。)

★ ムール貝 ★

 「カラス貝」とバカにされて、昔の日本ではあまり食べなかった貝。
大粒の物は、日本では高値なので、ヨーロッパに旅行した時に食べる。
その味は、国によって色々である。日本人の舌に合うとすれば、やはり
ラテン系諸国 (スイス・ロマンドを含む) だろう。余分な味付けをせず
に、ムール貝とワイン、そしてほんの少しの香草のみで仕上げてある。
店によっては、ときどき「器の底の方はクズ貝」ということがある。日
本人の胃袋は小さいらしくて、外国に出るとホンの少しだけ食べたら、
もう腹一杯ということが多いという事が知れ渡っているので、「一見さ
ん」には、まず「クズ貝から」という事があるのである。悔しいけど、
全部食べよう。次に同じ店に行った時には、ちゃんと覚えていてくれて、
鍋の底まで大粒の美味しいムール貝を敷き詰めてくれるぞ。 (そうでな
ければ、その店には二度と行かない。)

★ 盛り合わせ ★

 ヨーロッパの旅には、サペナ・ベルギー航空がお勧め。トランジット
が海に近いブリュッセルだから。ここで食べる魚介盛り合わせは 涙物
だ。ハマグリ、ホヤ、カキ、赤貝、小海老に 中エビ、ロブスター。店先
の氷の上に敷き詰めてある物から選ぶ事も出来る。 (値は張る...) もう幸
せすぎて、帰国なんかしたくなくなるだろう。

★ 舌びらめ ★



 昔は、瀬戸内でも「ゲタ」と呼ばれて人気が無かった。身が薄くて、
味も薄い魚だから。アッサリしすぎているから、洋風の調理が似合うら
しい。 (瀬戸内海の舌びらめは、ひょっとすると小さすぎるのかもしれ
ない。あの魚は、外洋に面した近海物の方がいいのかな〜?) オランダ
でオバケのようにデカイヤツにご対面、食べ甲斐があった...ゲップ。
写真に写っているのは、ベルギーの美味しいムニエル。

★ ホタルイカ ★

 こいつは、仙台で初めて出会ったグロいヤツ。スシの上に丸一匹乗っ
て、二つの目でギョロリとこちらをニラんでいるのを見た時には、「遠
慮しておきます」と思ったけど、見た目と違って生臭い事は無い。食べ
ている時には、味わうだけ。決して、口の中でイカの内臓がグチャグチャ
している所などを想像してはイカん! 「ご勘弁」という方は、軽くゆで
て、酢みそ合えでどうぞ。

★ スルメイカ ★

 干せばそのままスルメ。逆に、縁日ではテキ屋さんがバケツの中でス
ルメを戻していたりする。 (中華料理でも、干し貝柱を戻して食べるけ
ど、縁日のイカ焼きもそんな秘訣があるのかもしれない。もっとも、最
近は冷凍物を解凍するのが普通なので、あのアヤシイ雰囲気はない。)
結構アジが出るので、生をブツ切りにしてカレーを作ると美味しい。

★ マダコ ★

 生のデカイやつは高いので、私の財布には似合わない。もっぱら
モーリタニア産のゆでダコ。買って来たら、まず「ぐるぐるの足先」
をパクリ。タコの足先は、一匹に「たった 8 箇所しか」ついていな
い珍味なのである。味わい深い。その後で、薄切りにしてオリーブ
オイルで炒めたり、そのままワインビネガーをかけて食べたり、マ
リネにしたり。

★ イイダコ ★

 これはもう、里イモと煮るに限る。何故イモと醤油とタコだけで
こんなに美味しいんだろうか、と、感動もの。作りたて良し、冷え
て良し。カラス口は取り除いた方が食べやすいけど、面倒な時はそ
のまま調理。どちらも、それなりに美味しい。 (もちろん固い所は
取り除いて食べるのだけど。)

★ ホタテ ★

 冷凍されている物は、軽くボイルしたもの。煮つける時には、生ホタ
テの方が美味しいけど、瀬戸内海では取れない。バター焼きとか、鉄板
焼きには汁の出ないボイル物がいいかも。卵は、あんまり味が無いので、
捨ててしまってもいいかもネ。

★ 貝柱 ★

 どでかい貝の貝柱。貝がデカイ割には、美味しい貝柱の部分は小さい。
歯応え、味とも ホタテ よりず〜っと美味しい。刺身、寿司、酢漬け、薄
切りの煮込み、何にしても美味しい。貝の捨てる部分は売っていないけ
ど、食べると稀に「あたる」とか。これは聞き伝えの話。

★ ニシ ★

 ホラ貝みたいな大きな巻き貝。肉質は固い。醤油でじっくり煮つける
と、ご飯のおかずに。お酒にも合いそう。

★ ツブ貝 ★

 岩に一杯くっついているけど、食える時期があるらしいので、地元の
人が食わないなら食わない方がいい。 (中腸線に猛毒を持つヤツも居る
とか。) また、煮ても「ホンの少し」しか食える部分がない。同じ巻き
貝でも、アワビなどとは対局をなすこの非効率さ....

★ マテ貝 ★

 採り方がまず変わっている。見当をつけた所の砂を、ほんの少しスコッ
プで削り、塩をまく。すると、縦長の貝が飛び出して来る。すぐ引っ込
むので、一気に引き抜く。この貝、味もまた濃厚なので、色々な惣菜の
主役・脇役として大人気の定番。

★ ナマコ ★

 海辺にいくらでも居るわけの分からないヤツ。家で飼おうと思って、
取って来ても、すぐ伸びて死んでしまうから、やっぱり海の水が命の
元なんだろう。魚屋で買ってきてから、しばらく時間が経つと表面が
溶け始める。溶けている部分、つまり食べる部分は、ナマコの皮で、
本体は真ん中にある細い腸。そこさえあれば、元どおり再生するとか。
ナマコは大根おろしとユズですね。 (赤が好き? 紫が好き?)

★ ホヤ ★

 新鮮なホヤなら、レモンをかけるだけで充分美味しい。但し、食え
ない「カラ」がすぐ腐って辺り一面にニオイをふりまくので、翌日が
ゴミの日か、それとも冷凍室に非可食部分だけブッこんでおくしかな
い。 (雨ざらしにして、塩を抜くと肥料になるらしいが、ウチに庭は
ない。) 漬け込んだホヤもあるけど、こっちはクセが強いので苦手。
なお、ベルギー人もホヤを食う。

★ ベラ ★

 これは、実は見た目だけで売れているんじゃないかと、思う事もある
けれど、数匹に一匹の「当たり」があって美味しいから、ダテに化粧し
ている訳ではないのかもしれない。塩焼きもいいけど、軽く酢につけた
物もいける。

★ イカナゴ ★

 淡泊ながら、しっとりとした肉質が好き。軽くゆでたのをサシミみた
いに少しだけ醤油をつけて食べるのが好み。春になるとイカナゴの「く
ぎ煮」が店頭に並ぶので、これまた涙物。

★ メルルーサ ★

 実は、本体は一度も拝んだ事がない。昔はメルルーサのフライが給食
のおかずの定番だったけど、今はどうだろうか? 給食と言えば、ついで
に思い出すのが鯨肉。美味しくない献立の代表格だったけど、いまでは
「人肉食の次に野蛮な習慣」とヤリ玉に上げられていて、「禁断の美食」
になりつつある.....

★ タイのアラ ★

 タイは骨の周辺こそ美味しい魚。塩焼きのタイを食べたら、最後に骨
や皮にお湯 (又はお茶) をかけてダシを味わい、刺身を食べたら次はアラ
炊き。アラをハシで突ついて身だけ食べるのは邪道で、骨ごとしゃぶっ
て何も味がしなくなるまで味わうべき。だから、気心の知れた人と食べ
るものだと思う。

★ もずく ★

 いくらでも売っているので珍しくも無いけど、実は中毒死の記録が残っ
ている。海辺で採って来た物を丼一杯食べたら、中毒症状が出てそのま
ま帰らぬ人になったそうである。珍味にしろ肴にしろ、一品を大量に食
うのは止めた方が良いと思う。

★ トコロテン ★

 海岸を歩いていると、紫色の海草が打ち上げられている。新しい物を
拾って来て、真水で洗っては、新聞紙の上で天火干し。数回繰り返すと、
まっ白なテングサのでき上がり。 (黄色い所は取りましょう。) 鍋に入
れてグツグツ煮ると、寒天が出来るので、そのまま冷やして、「トコロ
テン式に」押し出せばでき上がり。三倍酢に醤油とカラシで食べる方が
好き。

★ アンチョビーペースト ★

 イワシの塩漬をペーストにしたもの。イカの塩辛のイワシ版。西洋料
理には珍しい「うまみ調味料」である。カツオブシの代わりに使えると
考えて、まず間違いない。一番のお勧めは、パスタか固めのご飯にオリー
ブオイルと一緒にぶっかけて作る簡単おつまみ。固めの豆腐をモッツァ
レラチーズに見立てて、ワインビネガー・オリーブオイル・アンチョビー
でイタリア料理の出来上がり。プチトマトでも添えてどうぞ。

★ サバ寿司 ★

 これは香川の対岸、岡山名物。普通、サバ寿司というと、鯖の片身に
酢メシを押し付けてあるものだけど、岡山の物はメシの両面にサバが
はり付いている。当然ながら、同じ一切れでも 2 倍ウマい。生鮮食料
品に見えるけど、意外と持ちが良くて、作った翌日の方が味が出て美味
しい。冷蔵庫に入れると、メシが固くなって、「死ぬ」ので、決して冷
蔵してはならない。

★ 柿の葉寿司 ★

 奈良の名産柿の葉寿司。サバ寿司を一口大にして柿の葉で包んである
もの。最近になって、鯛や鮭のネタも作られる様になって来たけれども、
味わい深いのは何といってもサバ。木の葉に飯を盛るのは、飛鳥時代か
らの伝統。 (ちゃんと和歌に残っています。凄絶な歌なんですが....)

★ てんぷら ★

 香川県で「てんぷら」というと、揚げカマボコというか、さつま揚げ
のこと。細い「ほそ天」、エビたっぷりの「エビ天」などがある。軽く
蒸して、そのまま食べるのが一番好き。(写真はこちら)

★ お好み焼き ★

 お好み焼き、これ立派にシーフードである。生地に含ませるダシは、
カツオぶし又はサバぶしから取ったもの、具はエビ・イカ・タコ・ホタ
テ・カキなどの魚貝類を入れ放題、仕上げに青ノリとカツオぶし。お上
品に焼いた物を皿で出す店もあるけど、やっぱり目の前で焼いて、鉄板
の上で食べるのが一番いい。

★ タコ焼き ★

 イカだけのイカ焼きや、タイの全く入っていないタイ焼きと比べて、
タコ焼きには「大阪の文化」が入っていると思う。タコ焼きというから
には、タコが確かに入っていなければならない。さりとて、高い食いモ
ンであってはならず、庶民的に小腹を満たさなければならない。ついで
に、丸い形が「タコ」と呼ぶにふさわしい。生地を注いでから、セッセ
と形を整えて、早速食べる所が、せっかちな大阪人に向いているのかも
しれない。

★ エビせんべい ★

 「しまひでの海老煎餅」は、香川名物。エビ煎餅の善し悪しは、口の
中で噛みつづければすぐ分かる。エビが少ない物は、噛んでいる内にデ
ンプンが溶けて無くなってしまうのだけれども、エビの肉質を多く含む
物はエビの繊維が最後まで残って、スルメのように味わいがある。一度
おためしあれ。

★ 幻の魚肉ハム ★

 魚肉ハム、何をアホな! と思われるかもしれないけど、アレをハムと
思わなければ、それなりに美味しいのではなかろうか? まあそれは別に
して、昔むかし、ようやく物心がついた頃、冷蔵庫の隅に「魚肉ハム」
がやって来た「大事件」を覚えている。いつしか賞味期限が切れたら
しくて、「食わずに捨て(られ)た」事を、今でも惜しく思う幻の魚肉
ハム。きっと今食べたら幻滅するだろうから、思い出のままでいい。

(以後時々更新)

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番外編:

★ フナ虫 ★

 海辺に居るゴキブリみたいなヤツ。これが食えれば有難いのだけど、
ゴキブリと同じく身が殆ど無くて、食えない。人気の居ない所で、群
れになって出没するけど、足音一つで「サッ」と消えてしまう。どう
みても海のゴキブリと形容するしかない。

★ ヒトデ ★

 その辺で見つけるのは、大抵はイトマキヒトデ。星形をしていて、
色々な模様があって楽しい。妙なニオイがするし、身が固くて、食
えない。浜辺で遊んで、海に戻すのが良い。なお、南極にはヒトデ
のお化けが居て、人間の体くらいデカい。プランクトンが多くて成
長が速く、また海水温が低くて長寿なのだろう。

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