それはそれは昔の話、小学校入学直前のことである。地域の入学予定者
を集めて、健康診断を行った後で、最後に「校長面接」があった。つまり、
健康診断のついでに「校長の目を通す」仕組みになっていた。

 さて、私の順番が回ってきた時の事。校長は、私の健康診断書類に目を
通した後で、「お名前は? 」と、聞いて来た。その時、私が考えた事:

 --- 手元の診断書類に、デカデカと「西野友年」と名前が書いてあるの
  に、どうしてこの人はわざわざ私に名前を聞く必要があるのだろうか?

まあ、妙なロジックが私の頭の中を支配していたものだが、そういう訳で
私は何も答えなかった。校長は、2 度 3 度と同じ質問を繰り返したが、
こちらも意固地になって、なにも返答しなかった。人見知りが激しかった
のかもしれない。

 さて、2〜3 日してからのこと。某小学校からは、「精密検査の必要ア
リ」という連絡が、両親にあった。主な理由は「自分の名前が自分で言え
ない」という事だったらしい。要するに、校長面接でチェックが入ったの
である。当然ながら両親はカンカンであったが、「お上」の力は絶大で、
精密検査とあいなった。精密検査では、私の名前を尋ねた後で、簡単な心
理テストを行った。勿論結果は異常ナシ。 (当り前である!!) そういう訳で
無事、小学校に入学出来た。

 この幼児体験は、ひょっとしたら、私の人生を変えたかもしれない。
少なくとも、幾つか確信することがあった。

(1) 校長 (または公的機関の長) の裁量権は、強すぎる。
(2) 6 才にして、就学猶予というのは、判断が早すぎる。
(3) 学校制度は「入り口でふるいをかける」様に出来ている。

....それにしても、今日の私の性格は、既に 6 才にして、でき上がっていた
のだろうか?