「くりこみ理論」は、物理を目指す方ならば誰でも一度は「その正体
不明のアヤシイ響き」に心ひかれたはずである。私も、その一人であ
る。「コレはダジャレのネタになる! 」とピンと来たからである。刈
り込み・切り込み・繰り込み・蹴り込み (コリコミは苦しい....) があ
るではないか。もう少し変形しても良いのならば、

          売り込み      折り込み
刈り込み 切り込み 繰り込み ケリ込み
     しりごみ 刷り込み      剃り込み
                    取り込み
          塗り込み 練り込み 乗り込み
張り込み      振り込み      彫り込み (少し怖い)
               メリ込み 盛り込み
やり込み
割り込み

という規則性があるではないか。何の事はない、「り」が 2文字目に来
る二文字動詞の後に、「入る・繰り返す」といった意味合いを強める
「込む」という (普通は独立では使わない) 補助動詞とも動詞の一部と
もつかないモノがくっついているだけだ。英語でいうならば、「込む」
はさしずめ IN か? ならば EX もあるはずだ。探してみよう。今度は、
名詞形ではなくて、動詞で表わすことにして、

          売り出す
狩り出す 切り出す 繰り出す 蹴り出す
     シリ出す? 刷り出す
          釣り出す      取り出す
               練り出す 乗り出す
張り出す      振り出す      掘り出す (彫り出す)
    (マ行該当ナシ)
    (ヤ行該当ナシ)
割り出す

となって、「込む」に比べて少し自由度が少ない。 (ヤリ出すのように
「出す」が完全に動詞として働く場合は除外しました。) こうして見て
みると、一応「リ」で終わる 2 文字動詞は 5段活用するようだ。自信は
無いけど。

「込む」と違って、「出す」の方は意味がより明確なだけ、セットにな
れる相手の動詞が限られているみたいだ。「出す」の場合は、セットに
ならずに動詞そのものになってしまう場合が多い。例えば

 老け込む <---> 老け出す

は、片やほとんど一体の動詞なのに、「出す」の方はまだ歴史が浅くて
「老ける + 出す」の色合いが強い。何故ならば、「フケコミ」という名
詞はあっても、「フケダシ」という名詞は (まだ) 存在しないからである。
(駆け込みと駆け出しは、意味が全然違っていて、これまた面白い。)

 さて、本題の「繰り込み」に戻ろう。「糸を繰る」という風に、「や
やこしい物を何とかする」という意味を持つ「繰る」に、「中に入れる・
意味を強める・しまう」といった意味の「込む」がついて「繰り込み」
なのだから、「厄介な計算はさておいて、とりあえず表面上見える物以
外はクサイ物にフタしましょう」といった意味合いが込められている。
これは、会計用語の「繰り込み」で最初に現われたそうだけど、まさに
物理の「繰り込み」にバッチリ当てはまっているではないか。 (本当は
クサかったり誤魔化したりする「繰り込み理論」じゃないんだけど、
一般の印象は....啓蒙書の書き方が悪いんじゃ!?)

 たかが繰り込み、されど繰り込み。なかなか奥が深いではないか....