息抜きに大学の中庭へ出て、ひと時を過ごしていると、地面の虫
が目に入る。アスファルトの上も、よくよく眺めてみると恐ろしく
多くの虫が北へ南へと、せっせと移動している。アリ、だんご虫、
ヤスデやムカデ、蜘蛛、そして肉眼では存在しかわからない小さな
虫。

 アリは、なんだか移動が速くて、ゆっくり観察できないので、ノ
ロノロと動いているだんご虫を追って、「虫の気持ち」を理解しよ
うとした。科学的に言うならば、「経路の決定アルゴリズムを探る」
と言えるけれども、そんな高尚な事はどうでも良くて、ただ虫の後
を追って庭を移動した。

 しばらくたつと、だんご虫は、人の往来の激しい通路にさしかかっ
た。「あっ、踏まれる!! 」と思って、顔を上げたら、日頃お世話に
なっている事務の皆様であった。そして皆さんは、けげんそうな顔
をしつつ、お辞儀をして立ち去った。

 踏まれてペッチャンコになったかと思って、もう一度地面を見た
ら、幸運にも無事であった。単純にうれしかった。

 いい息抜きになった。