私が育った新興住宅地の周辺は、田んぼ。近くの川から水を分配
していたので、用水路には魚がいっぱい居た。当然魚採りもやっ
たやった。数人ひと組みになって、水門を開ける者、水門の底か
ら出てくる魚を網ですくう者、下流で「大物」を狙う者、いろい
ろな作戦で成果を競った。

  「水門開けるぞ〜」 「お〜」

という調子で、好き放題やった記憶がある。時々、お百姓さんが
飛んで来て、「こら! 勝手に水門開けるな! 」とどなると、蜘蛛の
子を散らす様にみんなで逃げた。そういう翌日には、小学校で教
頭先生から全校生に注意が下ったものだ。教師の心、生徒は知ら
ず。まあ、それが当然だろう。

★ フナ ★

 ため池のヘラブナも時々流れて来たけど、川で泳いでいるのは
スリムなシルエットのマブナが多かった。いつでも居るので、あ
まり人気が無かった。

★ コイ ★

 どこから流れて来るのか分からないけど、時々燈色のコイや、
ドイツ鯉が流れて来た。小学校のプールでは、冬の間にコイの養
殖をしていたから、それを買った人が自然に帰したのかもしれな
い。「伝説の大物」は、今思うと池を逃げ出したニシキ鯉だった
のだろう。

★ 金魚 ★

 縁日の翌日あたりに、「買いすぎた金魚」が放流されることが
あった。ワキンはフナとあまり変わらないので、自然の中で育つ
だろうけど、リュウキンは....生存競争に破れる運命だろう。

★ タナゴ ★

 フナとは少し違うけど、どこにでも居た点は同じ。あまり印象
に残っていないのは、普通の魚だったからだろう。

★ オイカワ ★

 なかなかすばしっこくて、捕まえるのが難しかった。青みを帯
びた透明感のある姿は、美しかった。

★ ドジョウ ★

 用水路に落ちている瓦や、隅の排水口の入り口なんかに居た。
これも、どこにでも居たので、有難みが薄かった。時折、赤み
がかった大物が居た。種類が違うのだろう。

★ 台湾ドジョウ ★

 ドジョウと名前がついているけど、別物。緑色の大きな魚で、見た
目は美味しそう。でも、戦後これを食ってエライ目にあった人々が多
いので、持って帰ったりしたら「それは捨ててこい! 」と怒られた。
良からぬ寄生虫を持っているそうだ。

★ ナマズ ★

 用水路をまたぐ「橋」の下などの影に潜んでいる。石を投げたりし
ておどかすと、出てくる。地震の言い伝えもあるので、川に戻す決ま
りになっていた。

★ メダカ ★

 網の目を潜って逃げる魚なので、目の細かい網を持ったヤツの専門
だった。金魚鉢の引き立て役くらいかな? コイと同居させると、時々
食べられてしまう。

★ アメリカザリガニ ★

 シュシュシューっとバックする光景は、少し滑稽。大きくなると、
魚をハサミで捕まえて食べる。かなり大きくなるけど、食えない (?)
ので、身をむかれて「カエル釣り」のエサにされる運命だった。ナン
マンダ。

★ カエル ★

 用水路に居るのは、主にウシ蛙と殿様蛙。関東以北で見かけるガマ
や水玉蛙は居なかった。雨蛙は水回りにはあまり居ない。ヒエのクキ
に黄色いクモを結んで蛙の鼻先に垂らすと、「パクッ」と食いつく。
ウシ蛙は用心深くて、すぐ逃げるけど、殿様蛙は強欲で食いついたら
離さない。針も無いのに、そのまま釣れる。釣った蛙には、可愛そう
な運命が待ち受けていたのだが、今はただ成仏を願うばかりである。
ナンマンダ。 (そのまま医学部に進んだヤツも居る。そいつの医院に
は絶対行きたくない。)

★ おたまじゃくし ★

 ウシ蛙の越年したおたまは、大きくて飼いやすい。その辺の藻と
一緒に洗面器に入れて庭先に置いておくと、足が出てカエルになる。
「田舎のたまごっち」といった風情があった。オタマの時は可愛い
のに、蛙になると夜中に逃げて田んぼに帰ってしまう。

★ タガメ ★

 時々「カメムシ」のお化けの様なタガメが流れて来た。魚の血を
吸うという話。本当かどうかは知らない。

★ かぶとエビ ★

 姿形は、かぶとガニのミニチュア版。川には居なくて、田んぼの中
に居る。太古の生物の末裔らしい。これは飼えない。すぐ死ぬので。

★ カニ ★

 名前は知らないけど、ともかく居た。沢ガニではなくて、もう少し
大きいやつだった。親子のカニが並んで歩いている風景も、良く見か
けた。

★ カメ ★

 当時は、野性のカメというと、日本古来のくさガメ。草色をしてい
るから、草ガメと呼ばれていたらしいけど、オシッコが臭いのでクサ
がめなのかもしれない。水のある所でないと暮らせないし、ニオイが
ニオイなので、捕まえても早々に放流された。時は変わって、現在で
は縁日の緑ガメが野性化して猛威をふるっているらしい。

★ ヒル ★

 当然ながら超きらわれ者。緑色の小さなヒルは、まだマシなのだけ
ど、黒いやつでドジョウくらいの大きさの「泳ぐ」やつが居て、これ
は要注意。噛まれたら、本当に「皮に穴が空く」。幸い、私は出くわ
さなかった。

★ ヘビ ★

 カエルがわんさか居る所には、必ずヘビもいっぱい居る。用水路に
落ちてくる様な間抜けたヘビは、そうそう居ないのだけれども、それ
でも縞ヘビや山カガシが時々コンクリートの壁を這い登ろうともがい
ていた。マムシは、もう少し山の手に潜んでいたので、水辺ではあま
り見かけなかった。

★ おかね ★

 たぶん、農作業や道路工事の方がポケットから落とすのだろうけど、
時々 10 円玉、ごくまれに 100円が落ちていた。10 円でもアイスが
買えた頃のこと....。

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やがて、周辺の住宅が増えるにつれて用水路は汚濁してしまい、
魚をみかけなくなってしまった。残念。