いかなごしょうゆ・いかなご醤油・イカナゴ醤油
----- 讃岐 (香川県) に伝わる伝統的な「日本の魚醤」 -----
(2005 年一念発起・
2006 年春の仕込み・
2007 年春の乾物仕込み
2008 年春の麹増量仕込み・
2009 年は不漁にて仕込まず・
ろ過 in 2009
2010 年春は麹抜き仕込み・
2011 年春は魚味噌の年か?・
プレゼン資料
2012 年春も麹抜き仕込み・以下に写真追加しました。)
かつて讃岐 (を含む瀬戸内一帯) の家庭で作られていた「いかなご醤油」を 2006 年
春に 仕込んでみた。14 カ月後 に「ろ過」すると、薄口醤油と魚ダシを足して割った
ような香りの「自家製いかなごしょうゆ」が出来上がった。炊き込みご飯にて試食。
ボチボチ料理に使いながら、大部分は更に夏越しの熟成。 (2007 年 5 月 暇人 記す)
2008 年から煮物やスープに活用中。3夏越した 2006 年春仕込みは香りがいいです。
→ 2006 年物は消費してしまいました。

−−− 仕込みの方針: ともかく食中毒しないものを作る −−−
材料
(1) いかなご (新子、ふるせ、どちらでも良い) 、いろいろな雑魚や、切り身や
ホタテなど貝類や、イカ、海老など。家庭で仕込むには数百グラムから数
キログラム程度までが無難。麹を使うなら乾物や「かまぼこ」に水を足し
ても良い。大きな魚の場合、胆のうだけは除いた方が良いらしい。
入手し易さや、後々の管理も考えると全量「いかなご」を使うことを推奨。
(2) 麹を一袋。魚介類重量の 10 %くらいか?! 麹が多いほど、醤油に近い味に
なる。ちなみに、麹と食塩水だけで仕込むと「純米醤油」となる。
※ 伝統的製法では麹を加えません。途中の管理も、最後の「ろ過」も、その
方が楽です。仕上がり時の、醤油香の強さが違って来るだけです。
(3) 塩を (1)+(2) の重量の 20 %以上。食塩が飽和する分量にするのが簡単。
(要するに塩が溶け残るようにするのが伝統的な製法で失敗がない。)
※ 「減塩」は、完成品を梅干しのように天日にさらしたり除湿器などを使って、
塩分だけ除去してから酒で薄める方がやり易い。もっとも、調理法を考える
と、減塩する必要もあまり無い。
仕込み (春に行う。半日仕事。低温で作業した方が良い。)
(a) 梅酒・梅干しに使う瓶を用意する。(但し金具やパッキンは外す)
(b) 原料の魚介を海水程度の塩水 (塩分は分量外) で軽く洗う。
(c) 大きい魚であれば 1cm 程度までザク切りにする。(細かい方が後が楽。)
「いかなご」なら、切らずにそのままで良い。
(d) 塩を加えて混ぜる。しばらく寝かせて再び混ぜる。数回繰り返す。

少し水が出て来ます。
(e) 麹を加えて混ぜる。しばらく寝かせて再び混ぜる。そして瓶に入れる。


麹が水を吸って固くなります。
※ 瓶は密封しない。ラップで包む程度で良い。原料全てをミキサーにかける
方法もある。但し、ミキサーが回らなかったり、あふれたりすると悲惨。
※ 加熱処理していない醤油による 再仕込み 製法も伝わるらしい。

最初は目が合います。

少量でも仕込めます。
はじめの頃のお世話 (約半年)
(f) 最初の数日は朝夕に混ぜる。(塩分濃度の低い所が出来ると腐る!)
麹は一週間程度で粥のようにとけて行き、灰色のペーストになります。
(g) 続くひと月ほどは毎日混ぜる。(表面から臭気が飛び去って行きます。)
(h) ドロドロに融けて来たらひと安心。後は月に一度ほど混ぜるだけ。
但し、表面だけ茶色に色付いたり、赤くなったりすると黄信号。
大抵は混ぜ込んでしまうと大丈夫ですが、心配なら取り去った後に混ぜる。
※ 撹拌の効果(推測ばかりですが....)
(1) 塩分の浸透促進・腐敗防止
(2) 原料の破砕による分解促進、優勢な細菌の拡散促進
(3) 低分子揮発成分の気化促進
(4) 嫌気性発酵の抑制
(i) 秋口になって、底や表面に 透明な層が見えて来たら、静かにそのまま熟成する。
ろ過・熟成 (数ヶ月〜数年後の作業)
(j) 翌春(またはもっと後)に、コーヒーフィルターを使って「もろみ」
を濾し取る。ろ過は気長に数日かけて。
(k) 薄口醤油色の魚醤を、そのまま寝かせる。適時賞味して良いけれども、
1年くらいは待った方が、より美味しい。保存は原液のままで行なう。
(水を加えると腐敗する危険があるので要注意。)

塩仕込み2年もの未濾過。
※ 「もろみ」から悪臭がしていれば失敗の可能性大。試しにろ過してみて、
それでも口に出来ない臭気を放っていれば、捨てる他ない。
※ 「もろみ」に含まれる油分は充分に除去しなければ生臭くなる。濾過
する際には、ゆっくりと圧力をかけずに行うのが良い。原料に対する
収率は 50 パーセントほど。充分な量が取れるので、自家製で商売に
しないならば、加圧ろ過する必要はない。絞りカスも、調味料になる
らしいけれども、食指が伸びないので捨てた。油分による生臭さは、
更に貯蔵すると時間とともに減って行く。(理由はよくわからない。)
※ 万が一ボツリヌス毒素が発生していても、加熱すると分解する。加熱
調理しない場合には、予め魚醤を加熱解毒(火入れ)してから、再び
濾過して使用するのが無難。

麹仕込み4年もの濾過済み。
賞味・調理
作り方・味ともにナンプラーや「アンチョビーの漬け汁」と、ほぼ同じで
す。麹の香りが付いている分だけ、より醤油という感じが強いかもしれませ
ん。自家製アンチョビーが流行してますから、皆さん、知らず知らず魚醤を
作っているのです、実は。イタリア料理にも良く合います。卵料理や、香り
の強い野菜の煮浸しにも向いています。
魚醤は魚醤なので、ダシと醤油を合わせて使うような料理に向いてます。
.... が、それでは「話のネタ」にならないので、言葉遊びのように「いかな
ご醤油のいかなご釘煮」「いかなご醤油の醤油豆」「いかなご醤油の生醤油
うどん」etc. と、妄想を広げつつ、ギョーザ作りなどから調理実験中 ....
控えめに使うのがコツのようです。
手作りすると安い??
.... 魚を魚屋さんで購入するならば、市販のナンプラーや、いしる・よしる
の安価さには太刀打ちできません。原料が浜値のものと勝負しても無意味で
す。梅酒や梅干しと同じように、自家製に「満足」を追い求めて下さい。
参考: 盛り上がりつつある「いかなご醤油」(外部リンク)
さぬき市の日本料理屋さん (← いかなご醤油を通販。
良く売れてるらしい。)
庵治町での製造風景
魚の棚での復活運動 (←「あかし魚笑」で google 検索すると引っ掛かります。
google ヒット数では「いかなご醤油」を脅かしつつあります。)
地方新聞より