物の値段とは何だろうか? 経済発展とは何だろうか? 土地の使い方
を見れば、少し理解できるような気がする。結論を先に言うと、経済
発展とは「人々が持てる物を、お金を媒介にして、より自由に交換で
きる状態への移行」を表しているにすぎない。

(1) A さんと B さんと C さんが、先祖から受け継いだ農地を持っていた。

  この時点で「生産財」として、土地の価値がある。どういう事かと
  言うと、それぞれの土地に持ち主に「◯年分の収穫または、それと
  等価なお金と引き換えに、土地をゆずってくれないか? 」と交渉で
  きる。この段階では、土地の値段は、その土地から得られる収穫を
  もとに自然に決まっている。

(2) A さんは B さんに土地を貸し、B さんは C さんに土地を貸し、C さん
  は A さんに土地を貸した。土地の貸し出し代金は、それぞれの土地の
  収穫の 2 割にした。

  この時点で、土地の価値は (1) より増していると考えられる。土地
  の売り買いだけでなく、貸し出しという選択肢も新たに加わり、よ
  り自由に土地を使えるようになったからである。地主から見れば、
  土地を売って現金を手にする代わりに、貸して現金を得られる訳だ
  から、土地の売却代金は必然的に上昇する。また、妙な話だけど、
  A, B, C の収穫の合計は変化しないのに、借地代の 2 割だけ経済が
  「発展」している。

(3) A さんは土地を B さんに売って、市街地に移り住んだ。

  土地を持っていれば、売却して「居住地を選べる自由」を手に入れ
  られる。自由もお金で買える。 (たとえば映画を見る自由は、お金
  で買える。) だから、土地売却の自由は、土地の価値を平均的に増
  加させる。

(4) B さんは土地を担保にして銀行からお金を借りた。

  上のようにして、先祖代々受け継いだ土地は、今や「高い現金価値」
  を持つようになった。価値のある物を銀行 (巨大な質屋) に預けて、
  お金を借りて何か他の物を購入すれば、それだけの経済効果がある。
  借りた土地に、マンションを建てれば、入居者の賃料も入り、その
  土地の価値は益々上昇する。

結局の所、土地にしても何にしても、「それと引き換えに得られる選択
肢が広がるにつれて」価値が増して行く。町中の一等地が何故あんなに
高いのかというと、何にでも使えるから、また同じ事の裏返しとして、
そこを使いたい人々が多いからにすぎない。

 そして....高くなりすぎた土地は、時として誰からも見向きされなくなっ
て、一気に価値を失う。何処かで聞いたような話だ....