★ 大学院で学ぶこと

 大学院とは、4 年までに学んだ物理学の基礎の上に立って、更に
専門知識を身につけ研究を行う所です。専門の研究において、基礎
知識は非常に重要です。解析力学・電磁気学・物理数学・量子力学・
統計力学などの基礎科目に自信の無い方は、復習して理解を完璧に
近い状態にしておいて下さい。また、光学・原子物理学・素粒子物
理学・相対性理論・群論・物理学実験などの幅広い知識も持ち合わ
せていることが理想です。 (独学は何をしても良いわけですから、
物性理論の研究室に所属していても、相対論的量子力学や場の理論、
重力理論に宇宙論を学習するのは勝手ですし、むしろ奨励すべきだ
と思います。)

 但し、知識を広げるあまり、「先入観の固まり」に陥ってはいけ
ません。大切な事は、「未知の世界に身を置いた時の助けとなる何
か」を、学習を通じて身につけることです。自ら情報収集をし、自
ら考える習慣をつけましょう。大学院とは、「自ら勉強・研究をす
する」所だとお考え下さい。 (少し禅の精神に通じる物があります。)

 なお、理論物理学研究室への進学を考えている方は、過去の院試
問題を全問解いておく事をお勧めします。我々大学院理学研究科で
は、どの程度の基礎知識を求めているのか、少しはご理解いただけ
るでしょう。(院試に落ちたら....) (以前の勧誘文)

★ M1 の学習

 独学が何にも増して重要なのですが、研究室の活動としては、M1 の
最初に多体問題についてのセミナーを行います。週に一度、指定した教
科書の読解を交代で行います。 (注: 輪番ではないので、誰が発表者にな
るかは、当日までわかりません。) セミナー中は、式のフォローや、内
容についての質問を随時行い、答えられなければ「退場」になって、次
の人にバトンを渡します。M1 向けのセミナーですが、妨害さえしなけ
れば、どなたが参加して下さっても結構です。

 研究室の枠にとらわれない、自由な自主ゼミによる学習も奨励します。

 ※ 「正しいタイピング」も、教育の一環として取り入れています。

 なお、もちろん自らの目標に向かって、研究を開始されても結構です。
近年、「M2 の 6 月頃までに研究論文を出す」ことが、博士課程で更に
研究生活を続ける上で重要な意味を持つようになり始めています。余裕
のある方は早速研究にも手をつけて下さい。


★ M2 の学習

 まだまだ学習すべきことは沢山あるのですが、M2 以降は基礎学習は
独学で行うのが普通で、研究室では「修士論文のテーマ」についての研
究を開始します。テーマは自分で選んで結構なのですが、何をやって良
いか分からない --- という場合は、スタッフが「半年でまとまりそうな
ネタ」を出しますので、好みに応じて選択して下さい。

 まあ、頑張れば卒業は何とかなるでしょう。博士を目指す方は、それ
なりに自らの実力を示して下さい。


★ 博士課程の過ごし方

 ....などという物があるならば、我々が知りたいくらいです。人それぞ
れ、自らの天性を信じて日々物理の研究をしましょう。もし、自信を喪
失したならば、もう手遅れなので「これから研究を進めてモノになるで
しょうか? 」と人に相談をしないように。 (相談に応じる人は、気休め
の激励をしないように....) 研究に行き詰まったら、分野を変えるのも一
つの手です。何度変えてもうまく行かなければ、それは.....中退就職も
選択枝の一つとしてお考え下さい。

 博士課程では、全国・全世界の中で、自分がどういう位置にあるのか、
把握しておく必要があります。井の中の蛙になってはダメなのです。研
究会や学会で、アンテナを張って、状況把握しておきましょう。


★ 博士課程を出たけれど....

 いきなり何ですが、今の院生は第二次ベビーブーム世代で、博士を取
る人も急増しています。しかし、急速な若年層の人口減少がすぐ後に待
ちかまえていて、教員の需要はジリ貧です。また、非常に優秀な学生が
「博士を取る前に研究職につく」という事例も増えて来ました。要する
に、「普通に 5年かけて博士を取っても、(恒久的に)大学で食っていく
のは難しい」という状況が生じつつあるのです。

 ここまで読んだ貴方は、それでも物理やりますか? え? やりたい?
ど〜してもやりたい? そこまで言うのならば、仕方がない、我々と一
緒に楽しい大学生活を送りましょう。