物性理論研究室・量子情報理論研究室
量子情報と量子計算の世界

 量子情報理論は、方程式の解の探索など特定の数学的問題に対して驚異的な能力を発揮する量子コンピューターの基本的な動作原理を、量子力学の基礎的な公理を出発点として構築して行く理論形式として、20世紀末より急速に発展して来ました。電子工学的な見地からは、現在の計算素子(LSI)が進化して行き着く先に「単原子素子」があり、そのような未来の世界を語る理論として引き合いに出されることもあります。一方では「前世紀の物理学が解決できなかった置き土産」を解決する鍵を握っているのが量子情報理論であると考える人々も居ます。神戸大学で物理を研究している我々も、まさにそう考えています。

量子情報理論はゴリゴリの物理学なのです

 例えば統計力学を習うと、基礎的な公理として「等重率」から出発するか、あるいはボルツマン・ギブス分布を最初から認めてしまいます。もう少し慎重に考える人々は、多数の部分系からなる巨視的な系に対して「定常分布の存在」を仮定し、中心極限定理の橋を渡ってギブス分布へと議論を進めます。これらの議論の、どこにも量子力学は出て来ませんが、誰でも知っているように巨視系も微視系も、全て原子分子や量子化された電磁場など量子力学に従う要素から構成されています。統計力学に量子力学を導入する、というと「量子統計力学」を思い浮かべるかもしれませんが、残念ながらそれは「現象論的折衷案」なのです。この辺りの怪しい部分を地道に研究して行くと、やがて量子エントロピーというものに出会います。統計力学の教科書の、冒頭に出て来るモヤモヤとした記述を、量子力学的な見地から明快に説明して行く事は量子情報理論の重要な柱の1つです。

重力場が気になりますか?では量子情報は??

 重力理論を研究している人々は、重力場に電磁場などの「量子化された場の理論」が絡んで来ると、なぜか熱力学的なエネルギー分布が得られることを経験的に知っています。これは、重力理論が空間を縮めたり引き延ばしたりする結果として、普段は気に止める事がない「量子場の情報量」が表に現れるからです。空間の、ある有界な領域を考えると、その内部と外部には量子力学的な相関があります。エリアルールと呼ばれることもあります。もっと野心的に、重力場の起源を場の情報量に求めようとする研究も、今世紀に入ってから盛んになって来ました。
 もうお気づきの事でしょう、量子情報理論は「細分化され続けて来た20世紀の物理学」を、再び「ひとつの物理学」へと統一して行こうとする、物理学の新たな源流なのです。神戸大学で理論物理学を研究する私達と一緒に、あなたも量子情報理論の世界に飛び込んでみませんか?

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